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帝都大戦

豪華なキャスティングやスタッフ、奇抜なアイデアで評判になった、荒俣宏源作、実相寺昭雄監督「帝都物語」(1988)の続編。

今回は、前作のプロデューサーだった一瀬隆重氏自身が監督をし、総監督として香港から藍乃才を招き、W監督体制で作られているのが異色だが、やはり、素人監督の限界を感じさせる出来となっている。

太平洋戦争末期の有楽町界隈や日劇を再現したり…と、今回もそれなりに話題性を狙ったセットは用意されているが、如何せん、予算が前作ほど集まらなかったのか、キャスティングにしろアクションにしろ、全体的にチープな感じがつきまとい、安っぽくなった続編の典型例のようになっている。

香港から招いたワイヤーアクションチームの仕事も特段驚かされると言ったレベルではないし、スクリーミング・ジョージの手になる特殊メイクを駆使した幻想シーンも、身体が羽虫に変身した少女と言う衝撃的なイメージがインパクトを残す以外には、さほど印象に残らない。

やはり、話自体のスケール感が小さくなっていることに加え、加藤の悪夢に悩まされ孤独に生きている雪子、幼少時から実験台にさらされて来たと言う暗い過去を持つ超能力青年中村と言う、暗いキャラクター2人が主役なので、全体的に重苦しいだけで爽快感のようなものが微塵もないのが辛い。

そこに加わる美緒と言う少女は母と視力を失った薄幸な身の上で、明るいキャラ代表のような立場での出演だと思われる野沢直子の最期も悲惨…、背景となっている時代も暗ければ、敵役の加藤も暗いとあっては救いようがない暗さである。

見所としては、東宝特撮の中でも地味な人気がある「変身人間シリーズ」の「ガス人間第一号」の土屋嘉男と、「電送人間」の中丸忠雄が出ていることだろうか。

化学実験の犠牲者のようになったモンスターとしての中村にだぶらせたキャスティングのように思える。

特撮を手がけているのは「白組」で、派手さはないものの手堅い合成作業などが観られる。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1989年、エクゼ、荒俣宏原作、植岡喜晴+李美儀脚本、藍乃才総監督 、 一瀬隆重監督作品。

昭和20年1月1日

少女の美緒(戸恒恵理子)は、家の中で大好きな母親と2人きりの幸せな時間を過ごしていた。

流れ星を観たのと言う美緒に、願いごとはしたの?と母親が聞くと、大きくなったら、お母さんみたいにきれいになりますようにって祈ったのと美緒は答える。

その時、外にいた子犬のシロが鳴いていることに美緒は気づく。

台所にいた母親が、美緒の側に近づいて来ようとした時、今まで立っていた台所に、天井をぶち抜いて火の手が落ちて来て炎上し始めた事に気づく。

アメリカの爆撃機B-29が落として行く無数の焼夷弾が東京に降って来たのだった。

美緒は母親と一緒に外に逃げ出すが、一緒に連れて来たシロが逃げ出したので、慌てて追いかけて行くうちに母親とはぐれてしまう。

ようやくシロを見つけ、抱き上げた美緒は、東京が燃え上がる様子を観る。

その時、後を追って探しに来た母親が美緒を見つけ、歩み寄って来ようとした時、突如、母親の上に焼夷弾が落ち、母親は一瞬に燃え上がってしまう。

その時、美緒は、お母さん?お母さん?と手を前に出して歩き始めるが、眼が見えなくなったことに気づく。

長い長い太平洋戦争の末に日本は深く傷つき、B-29の焼夷弾は連日その上に容赦なく降り注いだ。(とナレーション)

帝都は正に死に絶えようとしていた。

日本の霊的指導者とも言える高僧観阿彌光凰(丹波哲郎)は、瀕死の日本を奇跡の逆転勝利に導くべく、驚くべき秘密計画を準備していた。

光凰は、ある夜、運転手役兼霊的用心棒役の中村雄昂(加藤昌也)と自動車でとある軍事施設にやって来る。

霊的なる国防…、仏法と科学を合一させ、調伏の技法を持って、連合国の主導者たちを一挙に呪い殺すと言う。

それは前代未聞の一大奇策だった。

第一回送信実験が開始される。

観阿彌光凰が護摩の炎の前で祈り始め、鉄塔が光り始める。

だが帝都は今、死んで行ったもの、死なせてしまったものの深い怒りと哀しみ、そして恨みに満ちていた。

その想像を絶する力が、一世年に渡って帝都を恨み続けて来た怨霊どもが彼を蘇らせ、地の底から彼を呼び覚まそうとしていた。

死体が山積みされた中から小さな魂が一つの首なし死体に集結し、その死体は加藤保憲(嶋田久作)となって蘇る。

呪殺の祈りを捧げていた観阿彌光凰は、何だ、この邪悪な気は?!と狼狽する。

立ち上がって歩き始めた加藤の背後で爆発が起き、鳥居が燃え上がる。

タイトル

霊的なる国防?近衛文暦(日下武史)から、鉄塔のある施設に呼びだされた東条英機(草薙幸二郎)は、とんでもない計画を打ち明けられ戸惑っていた。

そうだ、東条君。古来より我が国は国家鎮護の加持祈祷を捧げ奉り、調伏の技法を持って幾多の危急を切り抜けて来た。国家の存亡が問われる今こそ、我々は再び、霊的に武装すべきだと考えるのです。そして、この電波送信所こそ我々の霊的国防計画を担う最大最強の霊器!

財政上の理由から閉鎖され、以来10年に渡って放置されておりましたこの施設は、高さ180尺の電波塔を要する東亜最大の電波送信施設であります。私どもはこのたびの計画に鑑み、ドイツより5000馬力を誇る直流ダイナモンを取り寄せました。この設備を持ってすれば、祈祷室より発せられました観阿彌猊下の念は、巨大な霊波となって全世界に送信され、必ずや敵国の指導者たちを呪殺するものと確信して止みませんと、脇に控えていた二村技師長(中丸忠雄)が説明する。

このようなまやかしに踊らされて君は恥ずべきだと思わんのか!ルーズベルトやチャーチルを呪い殺す?バカバカしい!一億玉砕、本土決戦こそ人民の本懐!と東条は吐き捨てる。

しかし東条君、武力による国防はもはや限界です。あたら国民の命を無駄に散らすのみ!と近衛は反論する。

単に指導者の首がすげ替えられるだけではないか?と東条はなおも追求し、

東条君、それより他に、我が国が生き延びる道はない!虚空蔵の方を観念すれば明星の来英あり!天がそう告げたと観阿彌光凰も説得するが、貴様、わしを愚弄する気か!と逆上して立ち上がる東條英機。

米国は、B-29による執拗なまでの我が国への爆薬を繰り返すだけではなく、原子爆弾の開発にも極めて力を入れていると聞く。しかも、その標的として帝都が狙われていると言う情報は君も聞き及んでいるはずだと近衛は迫る。

東条!もうそれしか道はないんだ…と光凰が再度発言すると、うるさいな!貴様等の世迷い事に付き合っている暇はない!失敬する!と言い残し、東条は帰って行く。

帰り際、東条は、立ち上がって合掌した小笠原真教(高橋長英)の横に座ったままの中村に目を留め、出て行く。

後に残った近衛は、困ったことになったな。これでは表立って軍を動かせないと嘆くが、観阿彌光凰は、今朝、ドイツのオクティオン・アストラから密書が届いたと言うので、ヒトラー総統肝いりの占星術開発機関と聞いているが?と近衛が答えると、ナチスの占星術は誠に優れて実状に適している。かつてヒトラー暗殺計画を予知してこれを未然に防ぎ、チャーチルの供述を占ってロンドン攻撃を大成功に導いたなどと既に大きな成果を上げておる。決起の日取りと定めるべき、我が国最大の霊的吉日を占っていただいたと光凰は言う。

それは、いつ?と近衛が驚いて問うと、5月の1日と光凰は笑って答える。

病院の二階の踊り場に美緒は収容されていた。

立ち上がって、たどたどしい足付きで階段を下りようとした時、抱いて助けたのが、看護婦の辰宮雪子(南果歩)だった。

一旦は立ち去りかけた雪子だったが、美緒の事が気にかかるのか、途中で戻って来ると、監獄当直室のベッドに座らせ、自分のセーターを着せてやり、もう怖くないでしょう?と話しかける。

名前はなんて言うの?と聞くと、美緒と答えたので、いくつ?と問いかけると、お母さん、死んじゃったの…と美緒が呟いたので、雪子はぎゅっと抱きしめてやる。

その日、帰宅する雪子に、看護婦仲間の水木玲子 野沢直子)が、お砂糖が手に入ったので、お汁粉作るんだけどうち来ない?と誘って来る。

他の看護婦も一緒に行こうって誘うが、雪子は来そうにもなかったので、あんまり1人でいると、どうにかなっちゃうよと玲子は案ずる。

夕暮れ時、暗くなった道を帰っていた雪子は、外套を来た軍服姿の男の姿を見かけ立ち尽くすが、他の軍人たちが集まって来て、一緒に通り過ぎて行ったので雪子は安堵する。

一人暮らしの自宅に帰り着いた雪子は、水を飲んだ後、鳥籠の小鳥を眺める。

夜、布団に入った雪子は、なかなか寝付けないでいた。

その時、障子戸が独りでに開き、窓ガラスから、燃える鳥居が見える。

次の瞬間、何者かがナイフを雪子に突き立てて来たので、思わず身を避けるが、少女に戻った雪子は髪の毛を引っ張られる。

そして、加藤保憲が部屋の中に近づいて来たので、来ないで~!と叫んで飛び起きた雪子は、鏡台に置いてあった化粧水の瓶が割れるのに気づく。

寺に車で戻って来る観阿彌光凰は、帝都は傷だらけだ。すでにここは戦場だ…と呟くが、その時、運転していた中村雄昂(加藤昌也)が、危ない!と叫んで車を止めると、目の前で爆発が起きる。

外に飛び出した中村は、暗闇の中から銃撃を受けながらも、必死に敵の位置を探す。

その時、眼の前に、撃って来た兵隊の姿が現れたので、中村はそして全身の力を込めて霊力を発すると、相手は後方に吹き飛ばされ、壁に激突して死ぬ。

しかし、気を発した中村の方も、血反吐を吐く消耗振りだった。

中村の脳裏には、フラッシュバックのように、子供の頃、頭に奇妙な機械をかぶされ、実験台に座っていた時の事が脳裏に浮かぶ。

翌朝、病院にやって来た雪子は、先輩看護婦から、今度、子供たちを福島に疎開させようと思っているんだけど、あなたも行ってくれるでしょう?と言われ戸惑う。

その時、まだ、宿直室内で寝ていた玲子は慌てて起きると、私は死にたくありませんからと疎開組に参加する意志を示し、雪子にも一緒に行こうと誘って来る。

部屋を移るように他の看護婦から説得されていた美緒は、雪子が近づいて来ると、まるで眼が見えるように雪子に駆け寄って行くので、美緒ちゃんは、雪子さんだけはしっかり見えるのねと他の看護婦から皮肉を言われてしまう。

雪子は美緒に、本当にお姉さんが見えるの?どんな風に?と聞くと、ぼんやり光ってるの。瑠璃色みたいにと美緒が答えたので、そのことは誰にも言わないって約束してくれる?お姉さんと美緒ちゃんだけの秘密!と雪子は言い聞かせると、自宅から持って来た藤色のお古のセーターとお守りを美緒に与える。

その後、雪子は、有楽町の郵便局に来ていた。

封筒を受け取った局員(荒俣宏)は、月曜日には御届け出来ると思いますと言う。

同じ頃、有楽町ガード下で中村は、仲間の小笠原真教を監視していた。

やがて、1人の軍人が小笠原に近づくと、何事かを告げて、小笠原が持っていた書類のようなものを持ち去る。

その直後、空襲が始まり、ガード下に避難していた中村は、何か強い気配を感じ外に飛び出すと、高架線の鉄塔の上に立っている、外套を着た軍服姿の男を発見する。

ふと横を観ると、雪子も道でその軍人を見上げ、加藤!と呟いていた。

加藤保憲は念力で地中からガス管を引きずり出し、ガスを噴出し始めたので、危険を察知した中村は雪子に飛びつき、押し倒すことで、ガスに引火した爆発から助ける。

その直後、鉄塔を見上げた中村だったが、すでに加藤保憲の姿は消えていた。

中村は、加藤と名を読んでいた雪子に、奴は何者なのですか?あなたには強い霊力が宿っているではないですかと問いかけるが、雪子は、話したくないんです、何にも!と言うと、その場を立ち去る。

しかし、自宅に戻って来た雪子は、家が全焼していることに気づき呆然とする。

一緒に付いて来た中村を前に、こんな時代だから、1人ではとても支えきれないものになっている。私は逃げてばっかり…と雪子は落ち込むが、そんあ雪子の手を握った中村は気を送り込む。

すると、雪子の身体の周囲に光の粒子のようなものが飛び交う。

雪子も中村の右頬を擦ってやると、私にあなたのような力があれば…と中村は羨みながら帰ろうとする。

あの…と何かを言いかけた雪子だったが、そのまま会釈をして見送るが、その直後、全焼した家の中、無傷で置いてあった小さな仏像を発見する。

寺で1人念仏を唱えていた小笠原の元に、中村と共にやって来た観阿彌光凰は、悩み事か?わしには言えぬ悩みのようだな?軍に金で買われたか?何故裏切った?と問いかける。

小笠原は、人を呪い殺すなどもはや宗教ではない、一千年にも及ぶ暗黒が、この帝都を押しつぶそうとしている。我々は如何に無力なことか!私はもう仏の道を歩き続ける自信がなくしましたと告白すると、その場を立ち去ろうとしたので、中村が呼び止めようとするが、光凰は追うな!と中村を制し、お前には使命がある。お前を拾った時から、お前の身体はお前のものではないと言い聞かせる。

我々は、何としても、日本を救わねばならぬ。もう日本には後がない…と光凰は呟く。

ある日、病院にいた雪子は、美緒から雪が降っていることを教えられる。

そんな中、観阿彌光凰は、担当の軍人森少尉(斉藤洋介)が出迎える中、電波塔の施設にやって来る。

光凰は、我々の思い過ごしであれば良いのだが…と、何事かに憂えていた。

そして、又、呪殺の念仏を祈り始めるが、予想通り、妨害電波を捉えたと二村技師長(中丸忠雄)が叫ぶ。

光凰は中村に追えと命じる。

中村が、森少尉と部下たちと共にやって来た妨害電波の発信元は日劇だった。

すぐさま、守少尉と部下たちが日劇の中に入り込むが、その時、外で気配をうかがっていた中村が罠だ!と叫ぶ。

森少尉は驚き、部下たちと共に、慌てて退却しかけるが、日劇の内部が爆発し、数人の部下が爆風で外に吹き飛ばされて来る。

観ると、加藤保憲が道に立っていたので、中村と森少尉等はその加藤を追うことにする。

周囲が暗いので、森少尉は照明弾をあげることを部下に命じる。

その直後、怯えきった森少尉は、昇り旗が倒れただけなのに、恐怖心から銃を撃ち尽くしてしまう。

その直後、闇の中に浮かんだ加藤が、兵隊の1人を空中に持ち上げると、その身体をねじって地面に落とす。

仲間の兵隊たちは、訳が分からず、捻られた兵隊に狂ったように銃弾を撃ち込む。

その後、壊れた窓枠が飛んで来て、森少尉は身を避けるが、後ろにいた部下の首を切断してしまう。

やがて、加藤保憲が空中に浮かんで出現したので、怯えた森少尉は又しても銃弾を浴びせるが、全く効果はない。

逆上した森少尉は、手榴弾を加藤に投げつけようとするが、加藤が気を発すると、投げようとした右手から手榴弾が離れないことが分かり、森少尉は手榴弾を引き離そうとパニック状態になるが、次の瞬間、爆死する。

中村は加藤に念を送って背後に吹き飛ばすが、加藤は背後の壁に着地しただけだった。

中村は血反吐を吐いて踞るが、霊力を操るのか?と加藤は面白がり、自ら気を発すると、中村の身体を吹き飛ばす。

さらに、中村等が乗って来た自動車を浮かび上がらせると、そのまま倒れ込んだ中村目がけて飛ばして来る。

中村は必死に身を避けようとするが、ぶつかって来た自動車に足を挟まれ負傷する。

そのまま這った状態で逃げる中村。

そんな中、中村は雪子の姿を観たような気がするが、その幻影はすぐに消え、周囲には雨が降って来る。

中村の側に加藤が接近して来る。

中村は気を発しようと左手を差し出すが、加藤の霊力によってその左手を捻られ、さらに顔までひねり潰されそうになる。

加藤の力は圧倒的だった。

その戦いを感じ取ったのか、病院にいた雪子は呆然としていた。

お前たちの愚かな計画など握りつぶしてやる…と加藤は中村に語りかけ、この地で死でいったものたちは帝都が滅びるのを待っているのだと言い残すと去って行く。

満身創痍の状態の中村は、雪子の病院に運び込まれ、観阿彌光も来ていた中、緊急手術となる。

手術を受けている途中、中村は、子供の頃、鉛筆をナイフで削っていて指を切った時の事を思い出していた。

手術を担当していた医師は、縫合がすんだ中村の傷口が蠢くのを観て驚く。

中村は、夢の中で、超能力に目覚め、天窓のガラスを破壊した時の事を思い出していた。

中村の胸の傷は、どんどん広がり出血して来たので、医者は慌てて止血するが、側で観ていた雪子は呆然としていた。

手術後、中村の側にやって来た美緒は雪子に、この人も薄く光っているよ。露草みたいな青い色と教える。

その後、何とか命を取り留めた中村は、雪子に付き添われ、松葉杖をつきながら病院の庭先を歩いていた。

ご覧になったでしょう?この胸の傷は、私が生涯背負い続けなければいけない十字架なんです。

子供の頃、力を弄んで、こんな落胤を背負い込んでしまった。それからすぐ、軍の施設に預けられました。私はあなたに会いたかった。あなたのことを知りたかった。私の事を知って欲しかった…と中村は伝える。

今の私には、何にもしてあげられないと雪子は詫びるが、中村が、もう思い残すことはありませんなどと言い出したので、いけません!加藤はあなたの敵う相手ではありません。戦ってはダメ!と言うと、お話しします…、何もかも…と雪子は告げる。

その後、雪子が中村を連れて来たのは、帝都を千年に渡って守護して来た平将門の首塚だった。

ここでかつて帝都の存亡を賭けた霊力の戦いがありました。その時加藤は帝都の破壊を目論んだんです。大正の大震災も加藤の仕業だと聞いています。その目論みは将門の血を引く一族によって阻止されました。でも加藤の影は、その後も一族を脅かし、その最後の生き残りである私にも…。加藤は帝都に巣食う怨霊たちの化身です。どんな力も加藤を打ち倒すことは出来ません!と雪子は打ち明ける。

そんな雪子をそっと抱きしめた中村は、雪子さん、これは私の戦いです。あなたはもう、加藤を観なくても良いのですと言い聞かせ、口づけをして来る。

翌日、病院にいた雪子は、折り鶴を折っていた水木玲子から、まだ迷ってるの?疎開のこと…と話かけられる。

さらに玲子は、あなた、接吻って知ってる?私、まだ知らないんだと笑う玲子は、だから私まだ死にたくないもんとあっけらかんと笑う。

そして、窓を開けて空を見上げた玲子は、あ、B-51!と声をあげたので、危ないわよと雪子が注意するが、大丈夫、病院は襲わないのと言った玲子は、次の瞬間、銃弾を浴び、その場で死んでしまう。

雪子は唖然とし、玲子さん!と抱き起こすが、玲子は既に息絶えていた。

その後、雪子は、空襲を受けた後、患者たちを避難させることになり、病院内を走り回っていた。

やがて、病院内にもう人が残っていないか確認していた雪子は、1人窓辺に立ち、外を観ていた中村に出会う。

帝都が燃えて行く…と中村は呟き、それを聞いた雪子は、中村さん、私も残ります。あなたと一緒に戦いますと声をかけるが、いけません。これは私の戦いなんです。あなたは疎開すると約束して下さい。あなたにはあなたの使命がある。美緒ちゃんを守ってやる。それがあなたの戦いのはずでしょう?私は必ず帰って来ます。加藤を倒して帰って来て、あなたとまた…、だから…と中村は雪子を説得する。

美緒の寝ている病室にやって来た雪子は、美緒の様子がおかしいので、シーツをはいでみると、美緒の首から下は大きな羽虫の姿に変身していた。

さらに、いつの間にか雪子の側に立っていた美緒が逃げ出したので、後を追った雪子はいつの間にか手術室に入っていた。

手術台の上には、手術を終えたばかりの中村が横たわっており、近づいて観ると、中村は苦しみ出し、その胸の傷口が内部から覗く指先で見る見る開き、体内から加藤が出て来ようとする。

さらに、加藤の顔で、身体は美緒と言う奇妙の少女が雪子の首に絡み付いて来る。

加藤顔の少女は3人出現する。

お姉さん!と雪子を呼ぶ美緒の声がして、気がつくと、身体が虫になった美緒の側には加藤が立っており、はっとした所で、雪子は目覚める。

病院内当直室の机に突っ伏して寝ていたらしい。

悪夢だと気づき振り向いた雪子は、そこに、夢の中と同じ虫になった美緒と加藤の姿を観る。

加藤は笑いながら、美緒の虫になった尻尾の部分をちぎってみせる。

雪子は、はっとして目覚める。

やはり、今の光景も、夢の中の夢だったようだ。

雪子は、窓の所に飾っていた仏像を手にして、恐怖と戦いながら恐る恐る振り向いてみると、そこには折り畳んだ布団以外、誰の姿もなかった。

その頃、寺に戻って来た観阿彌光凰は、中村が待っていたことに気づく。

只今、戻りましたと中村が挨拶すると、光凰は無言でその方に手を置く。

美緒は、寝ていた雪子が、一緒に福島に行こう。一緒に行ってと言う寝言を聞き、涙ぐんでしまう。

4月30日

ドイツのアドルフ・ヒトラー(ビョウーム・ルーライ)は、敗北的な発言をした部下たちを叱りつけていた。

我が国の未来は私にしか分からんのだ。君たちは知らんのだ。ナチスが定めた明日、盟友日本が霊的攻撃を行い、我が国を勝利へと導くのだとヒトラーは教える。

中村は加藤との最後の決戦に供え、子供の頃、自分の超能力を研究していた水野博士(土屋嘉男)を招いていた。

雪子は疎開する子供たちと共に、上野駅から列車に乗り込もうとしていたが、雑踏の中で、持っていた仏像を落としてしまう。

列車の中にいた美緒は雪子に、来てくれないかと思っていた。何となく、そんな気がして…と、嬉しそうに話しかけて来る。

水野博士は、中村から乞われ、腕に注射をしてやりながら、こんなことしたら、君の霊力は全て放出してしまう。否、それだけじゃない。君の霊魂そのものがエクトプラズムになって流出してしまう危険もあるんだよと警告する。

しかし、頭に機会をかぶった中村は、分かっていますと答えるだけだった。

やがて、電波塔からの送信が開始され始め、光凰は祈り始める。

ドイツでは、ヒトラーが、愛人のエヴァ・ブラウン(アーニャ・シュッツバッハ)と結婚式を挙げようとしていた。

その時、ヒトラーは、光凰が日本から呪いをかけている姿が出現したので、どうして私を?!と驚いていた。

その時、電波の様子を監視していた二村技師長が、奴だ!奴が来ました!と叫ぶ。

加藤保憲が電波塔の建物にやって来たので、頭に電線が付いたヘルメットのようなものをかぶった中村が迎え、加藤!と呼びかけ、気を送って来る。

その霊力に耐えようとする加藤だったが、凄まじい中村の霊力パワーで弾き飛ばされる。

力を使い切り、反吐を吐く中村。

その直後、闇の中で大きな爆発が起こり、中村の身体にも火が燃え移る。

中村は火を消しながらその場を逃げようとするが、加藤が追って来る。

電波塔の中の機械や送電器は次々と壊れて行く。

笑いながら中村に迫って来る加藤だったが、加藤が操る瓦礫の下敷きになってしまう。

満身創痍となりながらも、落ちていた鉄パイプを握り、それを支えに何とか起き上がった中村は、迫って来た加藤の顔を鉄パイプで殴りつけるが、加藤は全く効かないように笑っている。

虫けらが!身の程を知れ!と叫んだ加藤は、念力で中村の身体を建物の外へ放り出す。

出発した列車の中、雪子は座席で震えていた。

瓦礫の中で倒れていた中村は、雪子…と呟くとがっくり崩れる。

祈りを続けていた光凰は、護摩の炎が消えかかるのに気づく。

胸に下げたお守りを握りしめていた雪子の身体が突然光ったかと思うと消え失せる。

加藤は、祈りを続けている光凰の元へやって来るが、その部屋の前には、身体中に念仏を筆で書き込んだ裸の僧たちが一心に念仏を唱えていた。

しかし、あっさりその僧たちを蹴散らした加藤はドアを開け、部屋の中に入って来る。

それに気づき振り返る光凰。

その時、中村が倒れていた瓦礫の側に空中から落下して来たのは雪子だった。

テレポーテーションして来たのだった。

中村に近づこうとした雪子に、辰宮雪子か?と呼びかけて来たのは、建物の屋上に出現した加藤だった。

加藤はゆっくり地上に舞い降りて来ると、雪子は加藤!と叫ぶ。

すると、加藤の左顔面の皮膚が弾け飛ぶ。

しかし、左半分が筋肉むき出しになった加藤は、痛くもなさそうに笑っているだけ。

次の瞬間、雪子が胸に下げていたお守りが焼けて落ちる。

迫り来る加藤に、後ずさる雪子。

その時、明子の左手を握りしめて来たのは、死んだと思われた中村の手だった。

中村はまだ死んではいなかった。

ゆっくり立ち上がった中村は雪子をかばうように加藤の前に立ちふさがると、加藤は中村の首を締め上げて来る。

その時、加藤の口が不自然に開いて行き、そこに、中村の口から飛び出たエクトプタズムが加藤の口の中に滑り込む。

すると、加藤は急に苦しそうな表情になる。

加藤の身体の中を誰かがかき回しているかのようになり、加藤の頭部が内側に向けて崩れ込むと、腹の部分からエクトプラズムの固まりようなものが光りながら飛び出して来る。

後には、加藤が乗り移っていた首なし死体だけが地面に倒れ落ちる。

その頃、電波塔が発光し、光凰の呪いの祈りは最後の段階を迎えていた。

その呪力に操られ、ヒトラーは拳銃を自らの口の中に押し込もうとしていた。

その自分の右腕に必死に抵抗するヒトラー

加藤の身体から出た光るエクトプラズムは中村を襲おうとしていた。

中村が雪子の方に目をやると、雪子は合掌し、将門に祈り始める。

将門公!怨霊を鎮めたまえ。地の底へと導きたまえ!

ヒトラーは、エヴァの目の前で自殺し、その瞬間、祈っていた観阿彌光凰もがっくり力尽きたように崩れる。

そして光凰は、側で観ていた近衛文暦に、日本は負けるよ。これで戦争が終わる。帝都が残れば、例え戦争に負けても、いずれ日本は勝利する日は来ると告げたので、おのれ!計ったな!と近衛は悔しがる。

加藤の怨念は具現化したエクトプラズムは地面に吸い込まれて行く。

中村が微笑みながら雪子に近づいて来るが、雪子のすぐ側まで来たと来、力尽きたかのように倒れ込んで来る。

それを抱きとめた雪子は、何か言いかけて息絶えた中村の身体を支えながら、泣きだす。

福島の病院の庭先では、子供たちが「かごめ かごめ」を歌いながら遊んでいた。

円陣の真ん中にかがんでいたのは美緒だった。

「後ろの正面 だ〜れ?」と聞かれた美緒は、急に立ち上がると、嬉しそうな表情になり、カゴメの輪の中から走り出して行ったので、子供たちは、美緒ちゃん!と呼びかける。

美緒は、桜が咲き乱れる並木道の奥から近づいて来る雪子の気配を感じたのだった。

美緒が近づいて来たことに気づいた雪子は微笑み、抱きしめると、行こ!と声をかけ、手を繋いで一緒に病院へと向かうのだった。

アドルフ・ヒトラーの急死によって、ナチスドイツは崩壊し、日本は戦争終結に向けて動き始めた。(とテロップ)

 


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